虫愛づるはよきこととして
久しぶりに「虫愛づる姫君」を読みました。
タイトルは聞いたことがある人が多いと思いますが、平安時代の短編集 堤中納言物語 におさめられた、変り者の姫君のお話です。
ほかの姫君は美しい蝶を愛でているのに、この姫は虫を、特に蝶になる前の毛虫を愛でて回りを困らせています。
姫君の言い分としては、
みんな外見ばかりをもてはやして、物事の根本を見ない。蝶ばかり見ていないで根本となる、毛虫を見るべし!
という至極もっともなもの。
ただ、平安時代なので科学というものがなく、姫の探求心は行きどころがありません。
おつきの女官は虫がこわいと逃げてしまうので、側でつかえるのは少年たちになります。やがて彼らにケラオ、ヒキマルという虫のような名前をつけて遊ぶという展開に。
単なる噂話のような一篇でした。
ほかの作品は、いかにも平安文学らしい垣間見や後朝の別れを扱ったもので、軽めの味わいです。モーパッサンの短編みたいな感じがでオススメです。