お題「行きたい場所」C.W.ニコルのアファンの森
私の行きたい場所は、C.W.ニコルのアファンの森です。
行きたいというよりは、行っておけばよかった場所と言ったほうがいいかもしれません。若い時に会員になって以来、毎年この時期に見学会の案内がきていたのですが、いつでも行けるという気がして、参加しませんでした。
でも、今の病状だと山を散策なんてできないから、行けるときに行っておけばよかったなと少し後悔しています。
アファンの森は、荒廃森の再生プロジェクトとして、C.W.ニコルが1986年に長野県の黒姫山の土地をトラストするところからはじめた森です。荒れ果てていて、「幽霊森」と呼ばれていた土地はその後の地道な活動によって見事によみがえりました。
80年代の日本は、景気はよかったけれども、社会問題は山ほどあって、連日うるさいほど報道されていました。人工林の放置で荒れた森林に、廃棄物が不法に投棄されるなんてニュースもよくありました。
当時、今よりは多感だった私は森林崩壊のニュースを見るたび、悲しく思っていました。そんなとき、C.W.ニコルが黒姫山でまったくの自腹でトラストをはじめたというニュースを見て、ちょっと感動したわけです。
C.W.ニコルは冒険家で狩猟家でもあるので、そこにもひかれました。この人なら、増えすぎた動物を殺すこともできるだろう。私はそう考えました。
当時、森林崩壊のニュースとともに自然保護運動もよく報道されていて、かなりスピリチュアルというか、どこか精神的に問題あるんじゃない?と言いたくなるような自然保護運動の人たちもよくテレビに出ていました。切り倒される予定の木にしがみついて号泣している異様な姿…うーん、これはイヤだなあ。
この人たちには、バランスをキープするために、増えすぎた動物を殺すというような決断はできないんだろうな。自然を保護というか、管理しなきゃならないわけで、ときには苦渋にみちた決断も必要になるだろうと思うけど。
その点、狩猟家であるC.W.ニコルなら、必要があれば動物を殺す決断もできるだろう。そう思って、私はささやかにトラストに参加し、会員になりました。ボランティアとして参加したことはないし、単に会費を払っているだけですけど、当時の私に小さい灯がともった感じでした。
それから何十年もたち、私の森林保護への気持ちはだいぶテキトーなものになりつつあります。それでも、だらだら会員を続けてよかったかもしれません。
いつか病状が改善して、ゆっくりでも山道を歩ける日がくるなら、行ってみたいな、アファンの森。