クスリと笑ってクスンと泣ける
とてもいい映画を見ました。
ヴィーゴ・・モーテンセン主演の「グリーンブック」
アカデミー賞をとったわりにはちっとも騒がれない映画でしたが傑作でした。
個人的にはヴィーゴ・モーテンセンのファンです。しっかり役づくりする俳優なので、名前を聞いてもわからないかもしれません。「ロード・オブ・ザ・リング」の騎士役が有名です。
モーテンセンが役づくりのために努力したことは知っていましたが、予想をはるかにうわまるかわりようにショック!
変わり果てたお姿。20キログラム増やしたお肉は体のいたるところにムチムチとあふれ、特にお腹まわりは容赦なく、前に横にはりだしています。
その姿で鍋から皿からつまみ食い。ベトベトの手はふかない。とにかくガツガツ食べる。
ああ、私の敬愛するモーテンセンさまはいずこへ。
この見下げはてた姿の主人公が用心棒としての能力をかわれて天才ピアニストの南部ツアー運転手にスカウトされます。
この天才ピアニストが当時めずらしい黒人インテリの男性、しかもツアーの行き先は差別が強く残る南部。
主人公自体も黒人差別しているし。うまくいくのかなあ?というところで物語がはじまります。
時代は60年代はじめ、南部はジャズ真っ盛り。なのに北部出身のピアニストの専門はクラシック、ピアノはスタンウェイでなきゃひかない。
ニューヨークの下町育ちの主人公はピアニストより、よっぽどジャズにくわしいわけで、ここでもうクスリと笑えます。
ただこのことは、このピアニストが南部にいっても黒人としての居場所がないことを暗示しているので、実は重たい笑いです。
このコメディ映画での笑いは全体にそんな感じです 。物語がすすむごとに、南部で白人から黒人がどんな目にあっているか、南部で北部からきた黒人がどんな目にあうのかを、ごく静かな怒りともに教えてくれます。
主人公とピアニストとの関係も変化していき、ちょっと泣けます。
音楽性もクラシックからジャズに進化していきます。個人的には、レイ・ブライアントのゴールデン・イヤリング風のフレーズが流れたときは興奮してしまいました。