非結核性抗酸菌症そらりす

非結核性抗酸菌症の患者の日常・投薬歴・入院歴です

抗生剤

医療のド素人なりの私の考えを先に言ってしまうと、抗生剤はとても有用な人類の発明であり、同時に、ヘタな使い方をすると害になってしまうこともある諸刃の剣だと思っています。

 

結核性抗酸菌症の場合、抗生剤の上手い使い方とは、病気の初期段階で複数剤を併用してしっかり投与すること。私は自分で勉強したわけではなく、あくまでもそらりすの受け売りなのですが、悪さをしている菌が何であるかを特定するのがむずかしいので、「数撃ちゃ当たる」式かつ力任せにぶっ込んでしまうしか方法がないのだと理解しています。

口惜しいのは、そらりすがそれを知ったのも後になってからで、発症初期には方針がブレにブレた中途半端な治療を受けてしまったことです。

たぶん、そらりすは既に書いていると思いますが、クリニックがジェネリックを処方しなかったとか、「粉末が服みにくい」と訴えたらクスリの量自体を減らされたとか、医師の責任・技量を疑わざるを得ない経緯もありました。ただ、ドラマに出て来る医師のような天才を一般の医師に求めるのは無理でしょうし、非結核性抗酸菌症の治療方法が今もって確立されていないこと、複数剤併用でも彼女が完治できたとは限らないことを考えると、この場で個々の医師を断罪しても得られるものがあるとは思えません。それよりも、この病気の初期段階におられる方が私たちとおなじ失敗をしないですむように、実例(サンプル)を提供していきたいと思っているだけです。

 

複数剤併用が中途半端だった結果、菌をしっかり叩けなかったのは残念極まりないことでしたが、同時に、耐性菌という厄介なものをつくってしまいます。抗生剤が菌に効かなくなることは、治療法がひとつ完全に失われてしまうことを意味します。そして、運が悪ければ副作用が出ます。

 

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そらりすのお薬手帳の副作用歴の欄には、次のように記されています。

 テオロング(息が苦しくなる)

 エサンブトール(視力障害)

 クラビット(頭痛かもしれない、確証なし)

 ミコブティン(視力障害、筋肉痛)

 

彼女にとってはどれも深刻な事態でしたが、エサンブトール(エタンブトール)のときは、そばにいるだけの私にもかなりインパクトがありました。

そらりすはアートに携わっていただけあって色彩にはとてもこだわりが強く、赤系の色が見えなくなったことにひどくショックを受けていました。副作用ということはすぐに推測できたので、服用を止めれば治るだろうとは思うものの、確証が得られないうちはメンタル的にきつかったことと思います。

主治医に相談するまえに眼科を受診したのは、年末年始で主治医が休みだったのか、そのあたりの経緯はよく覚えていません。とにかく、通院している病院に電話をしてエサンブトールの服用を止めていいかと当直の医師に訊いたら、「年が明けてから主治医の診察を受けてください」と言われたのでした。それで、居ても立ってもいられなくて、年末も診察している眼科を訪れたのだったかもしれません。ところが、近所の眼科では、エサンブトールとの関係はわからないので、やはり「主治医に訊いてください」とのこと。そらりすは、数駅離れた別の眼科を探して再度受診したのでした。そこで、副作用にはまちがいないと思うとの答えはもらったものの、それでも服用を止めるかどうかの判断は自分にはできないと言われました。大晦日かその前日のことだったはずです。

結局、そらりすは自分の判断で服用を止めたのでした。

そして年明け、主治医に経緯を報告して言われたのが、「それは賢明でした」

 

なんだよ、と言いたいです。

激務の医師に休みは必要。もちろんわかります。だから、こういう場合のためのシステムを、もうちょっとなんとかできないものか。

急に服用を止めるとよくないクスリがあることも聞いてはいます。しかし、この場合のエサンブトールはそうではないでしょうし、他の医師にも判断ができるようにしといてもらいたいものです。素人の患者本人が服用中止を決断したときの不安がどんなものか、考えてもらいたい。あるいは、患者本人の裁量に任せる部分を増やすなら増やすで、そういう制度を整備するとか。

 

それとは別に、抗生剤はだらだらと長期にわたって服用するもんじゃない、ということもあると思います。

何年も抗生剤を服み続けて来たことによるダメージが、そらりすの身体には少なからずあったと私は思っています。「抗生剤は諸悪の根源」的な考えにはまって、しばらく抗生剤を止めていた時期もあります。逆に、そのせいで病気が悪化したのかもしれない、と悔やむ気持ちも同時に抱えています。

そらりすの場合どうするのが正解だったのか、私に答えが出せないことはわかっていますが、このあたりのことについてはまた書きます。