非結核性抗酸菌症そらりす

非結核性抗酸菌症の患者の日常・投薬歴・入院歴です

今週のお題「わたしの好きな色」お帰り、黄色。ありがと、黄色。

今週のお題「わたしの好きな色」

 

私の好きな色、正確にいえば、以前は好きじゃなかったけど、好きになった色。それは「黄色」です。

 

私は非結核性抗酸菌症という名前の肺の病気で、エタンブトールという薬を飲み、視力障害の副作用を起こしました。

 

この非結核性抗酸菌症をひと言でいえば、人にうつらない、症状かるめの結核のような病気です。症状の進行も遅いので、すぐにどうこうということはありません。ただ、特効薬がないので、結核用の抗生物質を代用しています。

 

この抗生物質には副作用の出やすいものが多く、エタンブトールの視力障害もそのひとつ。患者の1~3パーセントという発生率ですが、運悪く経験してしまいました。

 

はじめは、「老眼がすすんだかな?」という程度の見えにくさからはじまり、やがて横断歩道の白線がたえられなくなるほどまぶしくなり、ついに色がわからなくなりました。

 

人によって見えにくくなる色が違うそうですが、私が見えにくかった色は黄色。

 

世の中から黄色が消えてしまいました。バナナの色は白っぽい粘土みたいになってしまいました。その代わりに、青と白だけがやたらと目立ち、日差しの明るいところでは、青と白がしゅうしゅうと煙をあげて燃えているように見えます。

 

部屋の中を見渡しても、黄色いものがなにも見当たりません…黄色いものってあったはずだけどな。バナナ、ビタミン入りのど飴のパッケージ。たしか、排水溝クリーナーの洗剤のボトルや使い捨てカイロの袋も黄色だったはずだけど…

 

商品のパッケージには黄色が結構多い。元気な、いかにも商業主義のおしつけがましい鮮やかな黄色が私はきらいでした。

 

でも、黄色のない世界のなんとさみしいことだろう。


黄色は、私にさようならをして行ってしまったのかもしれない。そう思うと、好きな色でもなかったくせに、胸がしめつけられるような気がしました。

 

入院して、抗生物質をやめて数日後、テレビの画面を見ていると、「あれ?黄色が帰ってきたかもしれない」。テレビの色も、マゼンタとグリーンが強すぎるような、おかしな色合いになっていましたが、そこにかすかに黄色が感じられたのです。

 

その後、白っぽいバナナは少しずつ、鮮やかな黄色にもどっていきました。黄色以外の色彩もなんとなく生き生きとしてきました。黄色はほかの色に静かに紛れ込んでいて、ものに一種の「生気」を与えていたのです。

 

さいわい、視力障害は回復しました。このときの経験から、私は黄色という色の値打ちを知りました。遅ればせながら好きになりました。

 

お帰り、黄色。ありがと、黄色。