非結核性抗酸菌症そらりす

非結核性抗酸菌症の患者の日常・投薬歴・入院歴です

衣類の整理

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そらりすのタンスの底からウサギ模様の日本手拭いが出て来ました。「かまわぬ」のものだとしたら太田美術館のショップで買った可能性が高いのですが、いつのことだったかは思い出せません。もしかして原宿でなく浅草だったかも? ただ、二人で出かけたときに買った記憶はぼんやりあります。

そして、皮の手袋は、彼女が独身時代にイタリアで買ったもの。お母さんへのお土産だったのですが、サイズが小さすぎて手が入らず、結局そらりすが使っていました。

こういうものだったら場所もとらないし、手元に残しておくことにします。

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そらりすの衣類を少しずつ処分しているところです。なかなか辛い作業です。

こういう場合どういう手順で行うのが正統なのでしょうか? 初七日も四十九日もやらないくせに、そんなことを気にするのは、やはりサッサと捨てることに抵抗を覚えるからなのですが、私なりに考えてみて、捨て方に伝統的なしきたりとかルールとかはないとの結論に至りました。

かつて、着物は貴重なものでしたから、持ち主が亡くなったときは形見分けとして近親者に贈られ、仕立て直したりして使われ続けたのでしょう。引き取り手のないものは古着屋に売られ、傷んだものは袋物や小物に作り直されました。

現在も、ブランド物なら下北沢あたりの古着屋に持ち込んだりネットで売ったりという手段があるのでしょうが、そうでないものは廃棄するしかないのでしょう。

亡くなって2ヶ月もたっていないし、そう急ぐことはないじゃないかという気持ちもあるにはあるのですが、家賃負担の軽減のため一人暮らし向きの部屋に冬ごろには引っ越したい事情が私にはあり、切羽詰まって慌てなくてすむよう少しでも準備を進めておいたほうがいいかなと思っているのです。

 

彼女が身につけていたものを順々に捨てていくのは心が痛いのですが、そう言いながらも、今度の場合はいろいろな巡り合わせに助けられて、実は私はかなり楽をさせてもらっているとも言えます。なんといっても、3年まえにも引っ越しをしたばかりでしたし、そのときに、そらりす自身の手で若いころの衣類は思い切って処分してしまったからです。トラックに積む荷物をなにがなんでも減らさなくてはならなくて、昔のDCブランドのワンピース、オーダーメイドのスーツ、友人の結婚式で着たドレスなど、「もう着ないね」ということで、片っ端からゴミ袋に詰め込みました。

そういうわけで、おしゃれ古着屋に持ち込んだほうがいいかどうか迷う服、思い出が詰まった服というようなものは残っていなかったのです。ウサギの手拭いみたいな懐かしいもの、彼女のこだわりが伝わって来るものが山のようにあったら、今の私は心身ともにもっと大変な思いをしなければならなかったはずです。

そして、3年もたてば、ふつうの女性なら新しい服がまた増えているのでしょうが、既に病気で外出の頻度が極端に減っていたそらりすは、ファッションから遠い生活を余儀なくされてしまっていたのでした。ウチに引きこもって、たまに外に出るのは近所のスーパーと病院だけ。メイクをすることもなく(もともとスッピンでいることが多かったのですが)、服も最低限のものがあればよくて、彼女はもっぱらネット通販で安い服ばかり買うようになりました。

もっとも、ファストファッション隆盛でネットで服を買う人が増えていて、病人だけでなく世の中ぜんたいがそういう傾向にあり、繁華街の人ゴミにもまれて買い物に行くのが苦手だったそらりすには合っていたのかもしれませんが。

白黒チェックのワンピースは、たぶん一度も袖を通してなかったと思います。看護師さんに「好きだった服はありますか?」と訊かれ、たまたま目に入ったので遺体に着せてもらいました。あれは外出着のつもりで買ったんでしょうか?

その他、ベージュのコート、水色のセーターとか、いろいろ捨てました。ゴミ袋に入れるとき、思わず、「ごめんね」と言いました。彼女に謝ったのか、服に謝ったのか?

 

黒いキャップは、最後の冬、通院のときにかぶっていました。ふだんはウチに引きこもっていて、病院に行くのに、ドアからタクシーまでの距離とはいえ、いきなり寒風にさらされるのはダメージが大きいにちがいなく、これで少しは防げたかどうか。この帽子は残しておきます。

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