非結核性抗酸菌症そらりす

非結核性抗酸菌症の患者の日常・投薬歴・入院歴です

ベッキーで思い出す、入院で同室だったおばさんのこと

ベッキーが結婚だそうで、ニュースでよく姿を見かけます。ベッキーを見ると入院中同室だったおばさんのことが思い出されます。

 

ベッキーの不倫騒動が話題だった三年前、私はストレプトマイシンの注射治療のために入院していました。話題だったとは書いたけれど、私は芸能ネタに弱く、いっさい何も知らずに入院生活を送っていました。

 

そんな私にベッキー騒動を逐一教えてくれたのが、隣のベッドに入院していたおばさんです。(4人部屋です)

 

「ねえねえ、そらりすさん、ベッキーが不倫だって。すごくいい子って感じだったのにねえ。」

 

おばさんは60代で、ちょっと前まで某商業施設で若者に交じって働いていた元気もの。それが最近になって糖尿病と診断されて、教育入院中です。(教育入院というのは、糖尿病のセルフケアを学ぶための入院のこと)

 

おばさんは自覚症状はあまりないらしい。体力もありそうで、少なくとも見た目は元気いっぱい。

 

で、暇です。私みたいにもうへろへろで、横になれば昼でも夜でもいくらでも寝られるという、わかりやすい病人と違って、教育入院のおばさんは、それはそれは暇なわけです。それで、芸能ネタに詳しくない、さして関心のない私にも話かけてくる。

 

テレビのワイドショーの情報を、私のために読みあげてくれます。ベッキーと川谷という男との関係、そいつがどんなにひどいヤツか。裏切られた奥さんがどれだけ可哀そうか。二人のラインの内容がばれて大変なこと。私は全部このおばさんから聞きました。

 

ベッドにはそれぞれテレビがついていて、病院発行のテレビカードというのを買って見ることができます。だから、私もベッキー騒動に関心があるなら、自分でテレビを見ればいいわけです。なにもテレビのテロップをだれかに読みあげてもらわなくてもいいっちゃいいんですけども。

 

でも、無下にするほどいやなおばさんでもないので、適当にふんふん聞いていると、相手も微妙に気づくもので、そのうち「そらりすさん、話しかけてもいい?」といちおう聞いてからテロップの読み上げにはいるようになりました。

 

そのうち、「そらりすさん、話しかけてもいい?」は、

「そらりすさん、勝手にしゃべってもいい?」に変化。

 

そして、テロップの読み上げをへて、いろいろなことを勝手にしゃべってくれるようになりました。

 

仕事していたころは楽しくて、同僚の若者ともうまくやっていて、よくいっしょにバイキングに行っていたこと。(それは糖尿病的にはまずかったかもしれない)

 

おばさんはリベラルだから保守的なダンナさまとは意見があわなくて、今もややケンカ中であること。その夫と自分は同じ食生活を送っていたのに、自分だけが糖尿病になってしまった。それがくやしい。(いやいや、夫婦して糖尿病よりはよかったと思うけど)

 

相談関係のボランティアをしていたこと。(けっこうマジメなんだな)

 

そんな会話が何日か続いたある日、おばさんは言いました。

「そらりすさん、拝み屋って知ってる?私ね、拝み屋にみてもらおうかなあ。」

 

えええ?拝み屋?

 

拝み屋というのは、祈祷師のこと。私は京極夏彦なんぞも読んでいるから、たまたま知っていましたけど、驚きました。リベラルで保守的な夫と意見のあわないおばさんが、拝み屋って…

 

「あのう、イタコみたいな感じですか?」

「うーん、近いかなあ。先祖代々拝み屋の家というのがあるんだわ。そらりすさん、私、拝み屋にみてもらおうかなあ」

 

おばさんは、セルフケアを熱心に学び、病院主催の勉強会にもかかさず出席する前向きな人でした。でも、私はこのとき、おばさんが見た目よりずっと糖尿病の宣告にショックを受けていることに気づきました。

 

拝み屋にいくかどうかについて、私は何も意見を言わなかったけど、おばさんはそれでよかったようです。数日後、おばさんは退院していきました。

 

ベッキーを見ると思い出します、おばさんのこと。元気に闘病しているのかな。元気に闘病って、へんな表現だけど。

 

ちなみに、おばさんのおかげで、テレビカードは使わずにすんでしまいました。